毎年夏のお盆前後に北軽井沢の山荘で数日過ごしております。今年も8月10日に来たのですが、到着した途端、荷物を運び入れている最中にスズメバチに頭を刺されました。

一匹のスズメバチが私の頭をめがけて真っすぐ飛んできて、体当たりする様にぶつかって、そのまま飛び去って行きました。そのぶつかった瞬間に刺して行きました。その瞬間はすごい”殺意”を感じました。

後で分かったのですが、玄関のすぐ横に物置があって、その中にスズメバチが大きな巣を作っていたのです。ここは私の所有する山荘ですが、スズメバチからすればほぼ一年間人の出入りの無かった家屋に巣を作って生活を続けて来たところに、突然侵入者が現れたのですから攻撃して来たのです。

すぐに刺された部分に強い痛みが始まりました。スズメバチに刺された場合の知識はありませんでしたので、念のため車で数十分の軽井沢病院まで息子に送ってもらい、診察を受けました。病院に来るまでの間は刺された部位を冷やす様に病院から指示されましたので、保冷剤を頭に当てて病院へ向かいました。

診察すると直径5cmほど腫れているとのことで、そこに副腎皮質ホルモンと抗生物質の入った薬を塗られました。

刺されて一時間以上時間を経過してアレルギー症状が出ていないので、アナフィラキシーショックの心配は無いとのことでした。アナフィラキシーショックとは刺されたのが2回目以降の人に出る、最悪ですと死に至る場合もある症状です。

夏の軽井沢では刺されて来る患者さんが多いと医師が言っておられました。下記の薬が処方されました。

  • 抗ヒスタミン薬:アレルギー、炎症を抑える薬
  • 消炎鎮痛剤:痛みや炎症を抑え、熱を下げる薬
  • 胃の粘膜を保護する薬
  • 上述の病院ですぐに塗られた軟膏:炎症と細菌の感染を抑える薬

病院に隣接した薬局でこれらの薬をもらってから帰りました。もう一回刺されると命に関わることになる場合があることを知って、周りに十分注意しながら家に入りました。

家のどこかに巣がある可能性が高いと思っていたのですが、翌朝案の定玄関脇の物置の中の壁の上の方にスズメバチの大きな巣があって、スズメバチが群がっているのを発見しました。すぐにネットに出ているスズメバチの巣を駆除する業者に数件電話しました。最後に電話した業者がたまたまこれから近くまで巣の駆除に向かうところだということで、駆除をお願いしました。他では数万円掛かりそうだったのですが、この業者の本業はハチミツ作りで、1万2千円という良心的な金額で駆除してくれ、おまけにハチミツまでくれました。

痛みの方は病院から帰っても全く変わらず、”痛い”とは正にこの事だというような痛みが続いておりました。家族の他の者たちは温泉に行ったのですが、私だけはそれどころではなく、山荘に留まり、横になってKAIESの治療ツールを使って治療をし続けました。患部を治療するのではなく、患部に回復力が働くポイントを見つけてそこにKAIESを当てるという治療をしました。

2時間程治療をしてもう治療ポイントが無い状況になったのですが、突然痛みが消え、刺された部位だけに違和感が残っているという状態になりました。翌朝にはその違和感も無くなり、完治しました。

病院から貰った薬は私にとって全部「閉A」、すなわち毒そのもので、全く服用しませんでした。塗り薬だけは息子が足の裏をアブに刺されたので使いましたが、私は使用しませんでした。医師からは刺されたところを冷やす様に指示されましたが、一切冷やしませんでした。

薬はすべて症状を抑えるためのものばかりで、治す働きをするものは一つもありませんでした。治るのは自分の回復力、すなわち炎症を起こして免疫の働きを高めることによって、すなわち自らが元々持っている力で治すのです。今回の回復の早さで、人間の持つ回復力の偉大さをつくづく実感させられました。

普通の人は治るのに数日掛かる様ですが、それは病院の指示通り薬を服用し、更に患部を冷やして回復力の働きが弱められるためだと考えられます。

蜂に刺されることは滅多に無い一方で、誰でも刺される可能性があります。病院でもらった蜂に刺された場合のパンフレットは誰もが知っておいた方が良い内容と思われますので、以下に全文を掲載します。

 

蜂に刺されたら・・・

1)速やかに現場から離れる

刺された現場の近くに巣のある場合が多く、ミツバチなどでは1匹の蜂に刺されると毒液(仲間の蜂に対して興奮物質として作用します)が空中に噴出されるため、その後、多数の蜂の攻撃を受けることがあり大変危険です。おおむね50m程度離れれば大丈夫と考えられます。

2)素早く刺傷部位を流水でよく洗い流す

蜂の毒は水溶性(蛋白質)なので洗浄により毒を薄めることと、熱を冷ますことが可能です。それにより痛みも若干軽減します。流水中、傷口をつまみ上げるようにして洗うとより効果的です。洗浄後も冷湿布(冷水を浸したガーゼ類で可)を続けると良いでしょう。ただし、針が存在する場合もあります。蜂の針には毒嚢(ふくろ)があり、毒を放出し続けるため、腫れているからといって刺傷部を上から圧迫すると毒を押し込みますのでご注意ください。

3)手持ちがあれば抗ヒスタミン剤軟膏・副腎皮質ホルモン軟膏などを塗布する

抗ヒスタミン剤を含む副腎皮質ホルモン(ステロイド)軟膏を創部に塗布すると発赤が軽快します。アンモニアは蜂刺されに全く効能がありません。俗に言う尿をかけることも同様で無意味です。そればかりか、接触皮膚炎を起こす原因にもなりかねません。

4)至急最寄りの医療機関を受診する

蜂に刺されたくらいといって軽く考えず、アレルギー体質で以前刺されたことのある方は、以上の処置をとった後、同伴者により至急医療機関へ向かってください。自分で車を運転して行ってはいけません。運転途中で全身症状が出現したら事故につながりますので大変危険です。臆せず救急車を利用しても構いません。刺傷部に針が残っている可能性もあるので、初めて刺された方でも、受信して医師に除去してもらうことをお勧めします。

 

蜂刺症(蜂刺され)

蜂刺されは夏に多いのですが、軽井沢周辺でも実際には5月のゴールデンウイーク頃から見られ、10月いっぱい頃まで続きます。蜂に刺されて稀に死亡する例もあり、その9割ほどが、7~9月に集中しています。この時期は蜂の繁殖のため防衛本能が高まっており、凶暴になっています。同時に人間は夏休みの時期でもあり、アウトドア・スポーツや行楽などで郊外に人出が増えるために刺傷トラブルが増加するのです。大きく分けて人を刺す蜂にはミツバチ、アシナガバチ、スズメバチなどがあり、全体では40種類を超える多くの蜂類が確認されています。

諸症攘

蜂の毒は種によりそれぞれ微妙に異なっていますが、いずれの場合でも体内に注入されると、痛み・組織の浮腫(むくみ)・破壊・血圧低下・平滑筋収縮などを起こすことが知られており、これらが総合的に働いた結果、激しい症状が出現します。

1)刺傷部位の激痛・発赤・腫脹・熱感・中心部の出血などが見られますが、やがて痛みはかゆみとなり2~3日続きます。時には刺傷部位が壊死を起こすこともあります。目を刺された場合は角膜などに炎症を起こします。

2)重症になると、倦怠感(だるさ)・気分不快・全身のしびれ感・浮腫なども出現します。これが後述する、蜂毒に対するアレルギー症状で、さらに呼吸困難・血圧低下・意識障害なども来した最も重篤な状態をアナフィラキシーショックといいます。

これらの治療には、局所の症状には抗ヒスタミン剤内服やステロイド剤の軟膏を塗布し、全身症状を来す場合には、エピネフリン(昇圧剤)を皮下注したり、気道確保やさらに多量のステロイド剤の追加も必要になります。

 

蜂アレルギーとは

蜂刺症による死亡例では、大部分の症例が致死量以上の毒を注入されたからではなく、蜂の毒に対するアレルギー反応により死亡すると言われています。これは蜂刺症が、IgE抗体と呼ばれる特殊な蛋白が関連した極めて短時間に成立するアレルギー反応で,刺されて10~30分程度で発症すると言われています。最も激しい場合には、血圧低下・意識障害・呼吸困難(喉頭や気管が腫脹するため)など呈し、アナフィラキシーショックと呼ばれています。しかし、初めて刺された人にはまだ蜂毒にたいするIgE抗体が存在しませんので、比較的ゆっくりと反応します。アナフィラキシーショックは2回目以降の人に起こり得る反応ですが、必ず起こるというわけではなく、IgE抗体価の高い人に危険があり、人口の1~3%程度と推察されています。蜂に刺されることによって抗原となる物質(蜂毒)が体内に取り込まれると、肥満細胞の表面で速やかに免疫反応(抗原抗体反応)がおこります。その結果、肥満細胞が活性化され、ヒスタミンなどの化学伝達物質が体内に放出され、体の各臓器に作用して、様々なアレルギー症状を引き起こします。ショック症状は頭部や頸部を刺された場合に多く発症する傾向があるようです。

 

蜂刺されを予防するには・・・

1)蜂の巣に近づかない

近づかない限り不意に襲ってくることはありません。万一蜂の方が近づいてきてもじっと動かないのが一番です。また巣をみつけても刺激しないことです。むやみに動くと蜂は攻撃されたと思い興奮して威嚇してくるので、余計に刺されてしまいます。威嚇されたら、姿勢を低くして走らず刺激をせずに速やかに巣から離れましょう。

2)黄色や黒っぽい衣類や帽子を避ける(特に黄色と黒のしま模様は最も危険)・・・

蜂は黒い色を天敵のクマと思って攻撃する傾向があるため、毛髮や目や眉毛を狙ってきますので、頭を隠すように低い姿勢をとりましょう。また、黄色い服も大型の蜂(自身より大型の蜂は天敵)として攻撃してきます。花模様の衣類には蜂が好んで寄ってくることもあります。また、密着する衣類を着て、下に蜂が入り込まないようにすることも大切です。

3)野外でジュースなど甘いものを飲まない。匂い(化粧品・整髪料など)をさせない・・・

蜂は花に集まるように、甘い香りに引かれて寄ってくる性質があります。また、香料の中には蜂を興奮させるフェロモンに似た性質をもつものがあるので、使用は避けましょう。

4)野外のものに不用意に触らない・・・

洗濯物の中に紛れている場合もありますから、注意が必要です。庭木に巣作りする蜂の種もあり、巣があることに気付かず剪定作業をしていると意図せず揺すってしまい、結果一斉に蜂が飛び出して来て刺されてしまう危険性もあります。

5)公害など刺される危険性のある地域での野外の単独行動は極力避ける・・・

上記のことに注意しても、なお刺されてしまう場合もあります。万一刺された場合、前述のように医療機関に一人で向かうことの危険を考えれば、野外での単独行動はしない方が無難でしょう。